白生地ができるまで
白生地とは
白生地と一口で言っても素材も多々あり今回取り上げる絹織物以外にも綿や麻、特殊繊維に至るまで多数あります、まずは着物素材の中でもっとも愛用され続けられる“絹の白生地”がどのように出来るのかを取り上げました。
絹製品の元となる繭とは
蚕(かいこ) の 繭(まゆ) からとった動物繊維。独特の光沢を持ち、古来より珍重されてきました。蚕が体内で作り出すたんぱく質・フィブロインを主成分とするが、1個の繭から約800~1,200mとれるため、天然繊維の中では唯一の 長ちょう 繊維 (フィラメント糸)です。蚕の繭を製糸し、引き出した極細の 繭糸(まゆいと) を数本揃えて繰糸(そうし)の状態にしたままの絹糸を生糸(きいと)と言いますが、これに対して生糸をアルカリ性の薬品(石鹸・灰汁・曹達など)で精練してセリシンという膠(にかわ) 質成分を取り除き、光沢や柔軟さを富ませた絹糸を練糸(ねりいと)と呼びます。ただし、100%セリシンを取り除いたものは数%セリシンを残したものに比べ、光沢は少し無くなります。前者は化学染料、後者はいわゆる草木染めに向いた生地になります。歴史的に前者の手法が用いられはじめたのは明治維新以降であり、また 養殖(養蚕ようさん )して作る 家蚕絹(かさんきぬ) と野性の繭を使う 野蚕絹(やさんきぬ )に分けられます。
いくつもの工程を経て出来上がった絹糸、ようやく繊維となり各産地に て反物(絹の織物)白生地へとなっていきます。
白生地の製造工程
白生地が出来るにはいくつもの工程があり 非常に長い時間と熟練の職人の技によって一反の絹織物が誕生します。
白生地の主な産地とは
白生地の産地は、 絹織物 、上布(じょうふ) 、 木綿織物(もめんおりもの)によって各地に分かれています。中でも絹織物の産地で最も有名なのは、京都府の丹後地方で、日本の代表的なちりめんの産地です。次いで滋賀県の長浜地方で、「浜ちりめん」という名で知られています。また、ちりめんと共に、ちりめん以外の白生地も生産している地方としては、石川県の小松や新潟県のごせん五泉地方などがあります。これらの産地では、羽二重(はぶたえ)や白紬(しらつむぎ)、絽(ろ)などの織物も生産されています。
丹後の白生地
丹後ちりめんは、経糸(たていと)に撚りのない生糸、 緯糸(よこいと)に1メートルあたり3,000回前後の 強い撚りをかけた生糸を交互に織り込み、生地にし、 その後、精練することによって糸が収縮し、緯糸の撚 りがもどり、生地全面に細かい凸凹状の「シボ」がで た織物のことをいいます。ちりめんの代表的存在である「丹後ちりめん」は、このシボが最大の特徴です。 ちりめんは、シボがあることにより、シワがよりにく く、しなやかな風合いに優れ、凸凹の乱反射によって染め上がりの色合いが、豊かな、しかも深みのある色 を醸し出すことができます。
長浜の白生地
浜ちりめんは「シボ」と呼ばれる、表面に凹凸模様の ある絹織物。無地ちりめんとして出荷され、加賀友禅 や京友禅にも使われる。純生糸だけを使う浜ちりめん の一つの反物には約3000個分の繭(まゆ)が使われ、 製品となるまでには約2ヶ月を要するという。織物と は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交差させて 織った布。シボは強い撚(よ)りがかかった緯が、 元の状態に戻ろうとする時、がっちりガードしている 経糸と経糸の間で盛り上がった時にできるシボが特徴。
「一越(ひとこし)ちりめん」やシボが大きい「古代ちりめん」、これまで多種多様のシボが開発 され、その種類は30を越える。シボは経緯合わせて何万本という極細の生糸の力の結晶なのです。
生地の種類
ちりめんにも多種多様な生地があり上記にある 一越めん・古代ちりめんの他に 紋意匠(もんいしょう ちりめん・地紋の入ったちりめん)、 縫い取りちりめん(生地に金糸・銀糸・うるし糸・ラメ糸など装飾糸を使って、生地模様を織り上げたもの主に丹後ちりめんが主流)、綸子(りんず ・拠りのない絹糸を経糸に使い光沢のある生地、 襦袢や帯揚げに使用)、羽二重(はぶたえ ・極細の絹糸で織りシボのない生地、男性用紋付などに使用)、塩瀬'しおぜ・特に太い緯糸をしっかりと打ち込んだ生地、 帯やふくさなどに使用)、パレスちりめん・ 朱子・精華などは裏地(八掛/胴裏)に使われています。いずれも国内生産量が減り後継者育成も含め、 日本の着物文化を守り続ける貴重な伝統産業です。